仮登記の危険性について(売主側の視点)

仮登記の危険性について(売主側の視点)

2023年5月23日
クラスイエ

不動産の売買のときに、売主側の立場で、
 仮登記についての注意点
があれば知りたい。

こんなテーマに関する記事です。

クラスイエ

不動産を売買する際に、売主の側からみると、「仮登記」は、かなりリスクがあると言えます。その内容について説明しています。


クラスイエ

仮登記とは、
 将来的に、その物件の所有権を得る為に、暫定的に登記簿に記載するもの
になります。

例えば、
 売買契約の時点で、何らかの事情で所有権の移転ができない
といった場合に、
 買主が、その物件のおさえる
という目的で、仮登記をするなどの場合があります。

もっとも、仮登記をするような場面は、あまりないでしょう。
というのも、実際の取引では、
 所有権の移転登記ができる状態で、売買契約を取り交わすということ
が、安全だからです。

また、この仮登記は、
 売主側のリスク
となります。

この「仮登記」のしくみが、正常に利用される場合は問題ないのですが、
 買主のなかには、悪意をもって仮登記をもちかけてくるケース
もありますので注意が必要と言えます。

下記にその具体的な内容について説明ししていきます。

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仮登記について

クラスイエ

仮登記は、不動産に関する所有権や抵当権などの「権利」を
 暫定的に登記簿に記載・記録しておくこと
をいいます(不動産登記法105条)。

例えば、
 売買の際に、所有権の移転に必要な書類がそろわない場合
に用いることがあります。

この場合、買主の立場を保護するという目的があります。

結果、
 本登記をした際の「順位保全効」
が認められることになります(不動産登記法106条)。

「順位保全効」とは、登記をする順番を、法的に保証するということです。
つまり、仮登記をした買主を第一順位とするという

では、売主側のリスクとしては、どのようなことが考えられるのでしょうか。

売主にとっての「仮登記」のリスク

クラスイエ

売主側にとっての、仮登記のリスクに関して、簡単にいうと、
 仮登記をした相手方がその物件を購入しなかった場合に、非常にややこしい問題になる
ということです。

通常、売主は、売買契約の際には手付金を受け取り、
 残金は、所有権移転の時に受け取る
ということになります。

ですので、何らかの事情で買主がその物件を購入しなかった場合、
 残金は受け取れない
ことになり、そのうえ、登記簿には、
 「仮登記の記載」
が残ってしまうことになります。

結果、その状態では、その物件を他に売却しようとしても、
 売却することが困難
となってしまいます。

その物件を担保にした融資も受けることはできません。

また、仮登記を消す(抹消)には、
・共同申請
・仮登記名義人の単独申請
・登記上の利害関係人による単独申請

の3つのパターンがあります。

物件の所有者(売主)が単独で申請する場合は、
 登記上の利害関係人による単独申請
にあたりますが、その際には、
 ・仮登記名義人に承諾を得ている場合
 ・仮登記を命ずる処分等がなされている場合

といった条件が必要となります。

仮登記名義人が、仮登記の消除の手続きに応じてくれるかも、グレーな状態となる可能性もあります。

では、具体的なリスクとして、どのようなケースがあるのでしょうか?

具体的なリスク

クラスイエ

地上げの際に使われていた??

例えば、地上げ屋さんが、地上げしたい土地があった場合、
 そのエリアの所有者が複数いる場合
と仮定しましょう。

同じタイミングで、との土地の交渉ができればいいのですが、なかなかそうはいきません。
そういった場合に、地上げ屋さんは、交渉がまとまった所有者から、
 売買契約と仮登記を行う
という場合があります。

そのタイミングでは、手付金だけのやりとりになり、残金は、他の所有者との交渉がまとまったタイミングになります。

すべての所有者の交渉がまとまるタイミングがわかりませんし、また、まとまらない可能性もあります。

その間、仮登記がなされた物件を他に売却することもできなくなってしまいます。

あるいは、更に悪質な場合、その物件が更地などの場合、可能性として、
 時効取得を狙っているケース
もあります。

非常に危険ですね。

ヤミ金の差し押さえの代わりに??

ネットの情報をみると、
 ヤミ金の業者さん
が、差し押さえの意味合いで、
 借り手の所有物件に「仮登記」を設定する
という場合があるようです。

ヤミ金さんへの返済が終わったあとも、仮登記は残ってしまいます。
それを消除するには、ヤミ金さんの協力が必要になりますが、その際は、当然、費用を請求してくるでしょう。
あるいは、消除に応じてくれないかもしれません。
そんな場合は、裁判での決着となり、それはそれでややこしいことになります。

仮登記に時効はある?

クラスイエ

仮登記自体には、時効はありません。
しかしながら、理論上、
 仮登記の原因
が時効で消滅すれば、仮登記の効力も無くなります。

例えば、
 売買予約を原因とした、所有権移転請求権仮登記
においては、
 売買予約の契約を締結したときから10年を経過すれば、本登記請求権が消滅する
ことがあります。
これは売買予約により発生した、予約完結権が消滅時効になることを理由としています。

この、予約完結権が消滅時効に関しては、
 時効の援用
を行う必要があります。

時効の援用とは、
 時効の完成を主張すること(相手方に伝える)
という意味合いです。
ですので、この行為をしないと時効が成立しないということになります。

ちょっと、ややこしそうですが、法律的な手順にのっとって手続きをするということになります。

対応策について

クラスイエ

仮登記に関しては、売主側の視点でみると、
 デメリットのほうが多い
ということになります。

ですので、物件を売却する場合は、
 売却できる要因が整ってから、すみやかに、売買契約、決済を行う
ということが望ましいといえます。

つまり、対応策としては、
 売主としては、仮登記は行わない
ということにつきます。

仮登記をしてしまうと、現実問題として、
 自身に所有権があるものの、他に売却もできず、その物件を担保に融資もうけることができない
という状態になってしまいます。

さいごに

クラスイエ

どうしても、仮登記をせざるを得ない場合は、
 どういったリスクがあるのかを十分認識した上で、契約を取り交わすこと
が重要になってきます。

また、
 ・売買契約書上にも、所有権の移転時期の期限を設けて、その場合の対応内容を記載する
あるいは、
 ・その場合のことを想定して、相手方に「単独申請の承諾」を書面でもらっておく
といったことも検討しても良いでしょう。
実際の場面では、登記関係に詳しい司法書士さんといった専門家のアドバイスを受けられることをお勧めします。

いずれにしても、仮登記の対応はややこしいので、なるべく避けたほうが賢明と言えます。

以上、仮登記の危険性についてでした。

【参考】本ページに記載の内容は、下記サイトも参照しています。

・仮登記とは?その効力・種類・費用などをわかりやすく解説
・仮登記の記載がある不動産売却は危険?仮登記について知ろう

クラスイエ